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祭祀承継者と墓じまい|誰が決められるか・承継者不在時

最終更新日:2026年9月29日|監修(法務):司法書士・行政書士 久留慎一郎|作成:安心墓じまい事務局(相談窓口責任者 田所)

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士|東京司法書士会 第7135号・東京都行政書士会 第11924号

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続手続きや改葬・墓じまいに関わる法律手続き、名義変更などを担当する。安心墓じまいの提携司法書士・行政書士。当サイトでは、改葬許可申請などの行政手続きと、相続・名義に関する法務部分を監修しています(墓じまいの施工内容・費用は監修対象外)。 監修者プロフィール・監修範囲 →

監修者プロフィールの詳細

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 改葬・墓じまいの手続き
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

「お墓の名義人は父だったが、墓じまいを決めていいのは誰なのか」「兄弟の誰も名乗り出ず、話が止まっている」——墓じまいを進めようとすると、必ず突き当たるのが祭祀承継者(さいしじょうけいしゃ)の問題です。結論から言うと、祭祀承継者は民法897条により①故人の指定、②指定がなければ慣習、③慣習も明らかでなければ家庭裁判所の審判、という順序で決まり、墓じまいの最終的な決定権はこの祭祀承継者にあります。承継者以外の人が代わりに手続きを進めることも、委任状や同意書があれば可能です。この記事では、祭祀承継者が誰になるのかという法律上の整理から、承継者以外が墓じまいする場合の手続き、承継者が不明・不在・認知症で判断できない場合の対処法まで、具体的な書類・チェックリスト付きで解説します。

墓じまい全体の費用がいくらかかるかは墓じまいの費用相場【広さ別の早見表】にまとめています。

目次

祭祀承継者とは?墓じまいを決められるのは誰かの基本ルール

祭祀承継者とは、お墓・仏壇・位牌といった「祭祀財産」を受け継ぎ、祖先の祭祀(法要やお墓の管理)を主宰する人のことです。預貯金や不動産のような相続財産とは別の枠組みで扱われ、遺産分割の対象にはなりません。墓じまいをするかどうか、いつ・どこへ改葬するかという判断は、この祭祀承継者が行うのが原則です。

決まる順番は「①指定→②慣習→③家庭裁判所」(民法897条)

民法897条は、祭祀財産の承継者を次の順序で定めています。

  1. 被相続人(前の名義人)の指定があれば、その人が承継する
  2. 指定がなければ、慣習に従って祭祀を主宰すべき人が承継する
  3. 慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が承継者を定める

指定は遺言だけでなく、生前の口頭や書面での意思表示でも認められると解されています。実務上、慣習で一義的に決まるケースは少なく、指定がなければ親族の話し合いで事実上決め、まとまらない場合に家庭裁判所の調停・審判を利用する、という流れが一般的です。名義人が死亡した後の具体的な手続きは墓じまいは名義人死亡でもできる?承継・名義変更と改葬の流れで詳しく解説しています。

「長男が継ぐもの」ではない・相続放棄していても承継できる

祭祀承継者は法律上、長男・年長者・親族という縛りがありません。次男や長女、配偶者、事情によっては親族以外の人が承継することもできます。また祭祀財産は相続財産ではないため、借金などを理由に相続放棄をした人でも承継可能です。逆に、承継したからといって被相続人の債務を負うことにもなりません。

祭祀承継者の決まり方3パターン比較

決まり方根拠・きっかけ実際に多いケース
①指定遺言・生前の書面や口頭での意思表示「墓は長男に継がせる」と遺言に明記していた場合など
②慣習地域・家の慣習に従う指定がなく、親族間の話し合いで事実上決める場合が大半
③家庭裁判所調停・審判(民法897条2項)話し合いで決まらない、誰も名乗り出ない場合

祭祀承継者に関する法律の考え方は東京弁護士会「お墓は誰が承継するのですか」でも解説されています。

墓じまいの実行権限は祭祀承継者にある

改葬(お墓を別の場所へ移す)には、墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)5条に基づき、お墓のある市区町村長の改葬許可が必要です。この申請の当事者になるのが、原則として祭祀承継者であり、墓地契約上の使用者(名義人)です。

申請書には「墓地使用者との関係」を記載する

改葬許可申請書には、申請者と墓地使用者との関係を記載する欄があり、施行規則上、墓地使用者等以外の者が申請する場合には使用者の承諾書等の添付が求められます。つまり、承継者(使用者)本人が申請する分には他の親族全員の同意は法律上の要件とされていない一方、承継者以外の人が申請する場合は承諾書が必要になるという建て付けです(自治体や墓地によっては親族同意書の提出を求める運用もあります)。

承継者と墓地契約の名義人が別人の場合の注意点

名義人が亡くなった後、祭祀承継者が決まっても、墓地契約上の名義(使用者)を変更する手続き(承継使用の届け出)を済ませていないと、改葬許可申請の当事者として扱われないことがあります。祭祀承継者が確定したら、まず墓地管理者のもとで名義変更を行い、それから改葬許可申請に進むのが正しい順番です。名義変更の必要書類・流れはこちらの記事で一覧にしています。

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祭祀承継者以外の人が墓じまいする場合の手続き

「承継者である兄が遠方・多忙で動けない」「承継者本人の代わりに弟が窓口をしたい」というケースは珍しくありません。承継者本人でなくても、委任状や承諾書を整えれば手続きを代わりに進めることができます。

委任状・承諾書があれば代理できる

祭祀承継者(墓地使用者)本人から委任を受ければ、親族や業者が窓口となって改葬許可申請や墓地管理者とのやり取りを代行することができます。前述のとおり、承継者以外が申請者になる場合は、自治体の運用として承継者本人の承諾書(改葬承諾書)の添付を求められるのが一般的です。様式や必要事項は自治体・墓地により異なるため、事前に窓口で確認してください。

代理で進める場合に準備するものチェックリスト

  • 祭祀承継者(墓地使用者)本人の委任状・改葬承諾書
  • 承継者本人の実印・印鑑登録証明書(求められる場合)
  • 承継者と代理人(申請する人)の続柄が分かる戸籍謄本など
  • 墓地使用許可証(永代使用承諾証)の写し
  • 改葬先の受入証明書・使用許可証の写し

承継者本人の意思確認をせずに手続きを進めてしまうと、後日「知らないうちに墓じまいされていた」という親族間トラブルに発展しかねません。制度上できることと、家族として望ましい進め方は別問題であることは墓じまいを勝手にされた・したい|トラブル対処と正しい手順でも解説しています。書類集めが難しい場合は、提携行政書士のご紹介も可能です(お客様と直接のご契約、報酬目安3.3万円〜)。

祭祀承継者が不明・不在の場合の対処法

代々のお墓では「誰が承継者なのか記録が残っていない」「そもそも承継すべき親族が見当たらない」という状態も起こります。状況ごとに取れる対応をまとめました。

パターン別の対応早見表

状況まず確認すること対応の方向性
承継者が誰か記録・指定がない過去の管理料の支払者・墓地管理者への届出記録親族で話し合って事実上の承継者を決める
承継者候補はいるが誰も名乗り出ない各人の事情(費用負担への不安など)費用は親族で分担できることを共有し、引き受け手を探す
親族の連絡先が分からない戸籍の附票などで所在調査ができるか弁護士・司法書士に調査を依頼する選択肢もある
話し合いがまとまらない・対立している家庭裁判所の調停・審判の対象になるか次章の家庭裁判所の手続きを検討する
そもそも承継すべき親族がいない推定相続人の有無お墓を継ぐ人がいないとどうなる?を参照

承継者候補がいるのに誰も引き受けたがらない背景には「継いだら費用と手間を全部背負わされる」という不安があることが多いものです。承継と費用負担は分けて考えられること、費用は親族で分担できることを共有すると、引き受け手が現れやすくなります。分担の決め方は墓じまいで兄弟と揉めない|費用分担と話し合いの進め方をご覧ください。

記録がない代々のお墓は墓地管理者への照会から始める

古いお墓では、誰がいつ承継したのかという記録自体が家庭に残っていないことがあります。その場合は、まず墓地管理者(寺院・霊園・自治体)に、使用契約上の現在の名義人が誰になっているかを照会しましょう。管理料の請求先として登録されている人が、事実上の承継者として扱われている可能性が高いためです。名義が数世代前のまま更新されていないケースもあり、その場合は名義変更の手続きから着手することになります。使用許可証を紛失している場合の相談先は名義人死亡後の墓じまいの記事でも触れています。

祭祀承継者が認知症・判断能力が不十分な場合

名義人・祭祀承継者が存命でも、認知症などで判断能力が不十分な場合は、本人の意思確認が前提となる手続き(委任状への署名など)を単純には進められません。判断能力の程度によっては、成年後見制度(法定後見・任意後見)の利用が必要になる場合があります。成年後見人が就いている場合でも、祭祀財産の処分(墓じまい)が後見人の権限の範囲に含まれるかは個別の判断が必要になることがあるため、家庭裁判所や専門家への確認が欠かせません。制度の詳しい使い方・進め方は認知症の親の墓じまいはできる?成年後見制度と進め方を解説にまとめています。成年後見制度そのものの概要は厚生労働省「成年後見はやわかり」、法務省「成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A」で確認できます。

祭祀承継を辞退・放棄することはできる?

「候補にはなっているが、遠方で管理できないので継ぎたくない」という相談も多く寄せられます。相続財産の相続放棄のように「祭祀承継の放棄」という明文の制度は民法にありませんが、実務上は次の2つの方法で対応できます。

承継そのものを辞退する

指定や話し合いの段階であれば、承継者候補になることを辞退し、他の親族に引き受けてもらう、あるいは慣習・家庭裁判所の判断に委ねることができます。いったん承継した後に別の人へ引き継ぐ(名義を再変更する)ことも可能です。

承継したうえで墓じまいをして手放す

「継ぐ人がいないなら、いったん自分が承継してから墓じまいをして整理する」という選択も現実的な出口です。承継してすぐに墓じまいをすること自体に制約はなく、管理の負担を将来にわたって背負わずに済みます。誰も継がないままお墓を放置した場合のリスクはお墓を継ぐ人がいないとどうなる?5つの選択肢と対処法を解説で詳しく解説しています。

承継者が決まらないときは家庭裁判所に定めてもらえる

話し合いで祭祀承継者が決まらない、あるいは承継者が誰かについて親族間で争いがある場合、民法897条2項に基づき、家庭裁判所の調停・審判で承継者を定める制度があります。家庭裁判所は、故人との関係の深さ、祭祀を主宰する意思や能力、生活状況などを総合的に考慮して承継者を判断するとされています。申立ては家事事件の手続きとして家庭裁判所で行います。なお、当窓口は墓じまいの実務を支援する窓口であり、親族間の紛争について代理・仲裁を行うことはできません(弁護士法上の制限があります)。紛争性のあるご相談は、弁護士や法テラス(日本司法支援センター)など専門窓口へのご相談をおすすめします。

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よくある質問

Q. 祭祀承継者は途中で変更できますか?

一度承継した後の変更に法律上の特別な手続きはありませんが、墓地の名義を再度変更する(次の承継者へ引き継ぐ)ことは可能です。墓地管理者に相談し、通常の名義変更の手続きを行います。

Q. 祭祀承継者と墓じまいの費用を負担する人は同じですか?

法律上の決まりはありません。祭祀承継者が窓口となり手続きを進めるケースが多いですが、費用は兄弟・親族で分担する例も多く見られます。分担の進め方は墓じまいで兄弟と揉めない|費用分担と話し合いの進め方で解説しています。

Q. 遺言に「墓は○○が継ぐ」と書いてあれば、それだけで手続きできますか?

遺言による指定は祭祀承継者を確定させる有効な方法ですが、改葬許可申請には別途、墓地契約上の名義変更(承継使用の届け出)が必要です。指定を確認できたら、まず墓地管理者に連絡して名義変更の手続きを行ってください。

Q. 承継者が海外在住・遠方でも手続きできますか?

可能です。改葬許可申請は郵送対応の自治体が多く、委任状があれば親族や業者が代理で窓口手続きを進められます。現地の立ち会いが難しい場合、写真での完了報告に対応する事業者を選ぶ方法もあります。

Q. 祭祀承継者になりたくない場合、断ることはできますか?

相続放棄のような明文の「辞退」制度はありませんが、指定や話し合いの段階で候補を辞退し、他の親族や家庭裁判所の判断に委ねることは可能です。すでに承継した後でも、墓地管理者への届け出により次の承継者へ引き継ぐことができます。

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まとめ

祭祀承継者は民法897条により、①故人の指定、②慣習、③家庭裁判所の審判の順で決まり、墓じまいの決定権はこの承継者にあります。承継者は長男や親族に限らず、相続放棄をした人でも承継できます。承継者以外が手続きを進める場合は委任状・改葬承諾書を整えれば代理可能で、承継者が不明・不在・認知症などで判断できない場合も、親族間の話し合い、成年後見制度、家庭裁判所の調停・審判といった対応策があります。まずは「誰が承継者にあたるか」を確認するところから始めましょう。

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この記事の監修者

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士|東京司法書士会 第7135号・東京都行政書士会 第11924号

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続手続きや改葬・墓じまいに関わる法律手続き、名義変更などを担当する。安心墓じまいの提携司法書士・行政書士。当サイトでは、改葬許可申請などの行政手続きと、相続・名義に関する法務部分を監修しています(墓じまいの施工内容・費用は監修対象外)。 監修者プロフィール・監修範囲 →

監修者プロフィールの詳細

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 改葬・墓じまいの手続き
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理
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この記事を書いた人

資格:終活カウンセラー。安心墓じまい 相談窓口責任者。幼少期の祖父母との温かい思い出を原点に、「誰もが迷わず、安心して終活を終えられる社会」を目指して、墓じまいから実家じまいまで終活全般の相談窓口を務める。ライフワークとしてYouTubeで高齢者の方々への人生インタビューを続け、シニア世代の本音に寄り添うカウンセリングを最も得意とする。記事は自治体・厚生労働省などの公的一次情報にもとづき、編集部とともに執筆・確認。

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