
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士|東京司法書士会 第7135号・東京都行政書士会 第11924号
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続手続きや改葬・墓じまいに関わる法律手続き、名義変更などを担当する。安心墓じまいの提携司法書士・行政書士。当サイトでは、改葬許可申請などの行政手続きと、相続・名義に関する法務部分を監修しています(墓じまいの施工内容・費用は監修対象外)。 監修者プロフィール・監修範囲 →
監修者プロフィールの詳細
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 改葬・墓じまいの手続き
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
「借金があるので相続放棄したいが、そうしたらお墓もどうにかなってしまうのか」——親の死後、相続放棄を検討する方が必ずぶつかる疑問です。結論から言えば、お墓は「祭祀財産」として相続財産とは別扱いとされており、相続放棄をしてもお墓を承継することは可能とされています。ただし、費用の出どころなど注意すべき点もあります。この記事では、法律上の基本構造、よくある3つの誤解、放棄した人が墓じまいを進める場合の注意点、8ステップの進め方までを解説します。なお、相続放棄の効力に関わる判断は個別性が高いため、実行前には必ず弁護士・司法書士にご相談ください。
相続放棄してもお墓は「相続財産」ではない【結論】
まず、法律上の基本構造を押さえましょう。「相続放棄=お墓も放棄」ではありません。
お墓・仏壇・位牌は「祭祀財産」として別扱いとされる
民法897条は、系譜(家系図など)・祭具(仏壇・位牌など)・墳墓(お墓)の所有権について、「前条の規定にかかわらず」——つまり預貯金や不動産などが相続人に承継される一般ルール(民法896条)とは別に——慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する、と定めています。これらは「祭祀財産」と呼ばれ、遺産分割の対象にも、相続放棄の対象にもそもそも含まれないと解されています。「お墓は相続財産ではない」——これがすべての出発点です。
相続放棄してもお墓の承継は可能とされる
相続放棄をすると、その相続に関しては初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。しかし前述のとおり、祭祀財産の承継は相続とは別の仕組みで決まるため、相続放棄をした人が祭祀承継者としてお墓や仏壇を引き継ぐことは可能と解されています。「お墓を継いだら借金も相続したことになるのでは」という心配は、基本的には当たらないとされています。放棄と承継は両立できる——これが多くの方にとって意外な、しかし重要な整理です。ただし個別のケースの判断は、必ず弁護士・司法書士にご確認ください。
逆に「お墓だけ放棄」もできない——承継者の指定・慣習で決まる
一方で、「お墓は継ぎたくないので祭祀財産だけ放棄したい」という逆方向の希望に対しては、相続放棄のような「祭祀の放棄」という法制度は用意されていません。祭祀承継者は、①被相続人の指定、②指定がなければ慣習、③慣習が明らかでなければ家庭裁判所の指定、という順で決まるとされています(民法897条)。継ぎたくない場合は、親族間の話し合いで別の承継者を決めるか、家庭裁判所の調停・審判を利用することになります。承継したうえで墓じまいをして永代供養に移す、という出口もあります。
相続放棄とお墓に関する3つの誤解
検索される疑問の多くは、次の3つの誤解に集約されます。順に訂正していきましょう。
誤解1: 放棄すればお墓の管理義務も自動的に消える
相続放棄をしても、お墓の問題が自動的に消えるわけではありません。墓地の使用契約や年間管理料は、相続財産ではなく祭祀財産・墓地使用権の側の問題として残り得るためです。誰も承継の意思表示をせず管理料も止まれば、お墓は将来的に無縁墳墓として整理される方向に進みます。「放棄したから無関係」と放置するのではなく、墓地管理者に事情を連絡し、承継するのか・墓じまいするのか・誰が窓口になるのかを整理することをおすすめします。契約上の扱いは墓地の規約によって異なるため、まずは管理者への確認が第一歩です。
誤解2: 墓じまい費用を出すと相続放棄が無効になる
最も切実な不安がこれです。ポイントは「お金の出どころ」にあります。民法921条は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは単純承認(=放棄できない状態)をしたものとみなすと定めています(保存行為など一部の例外を除きます)。このため、亡くなった方の預金など相続財産から墓じまい費用を支出すると、相続財産の処分とみなされ、放棄の効力に影響するおそれが指摘されています。一方、自分自身の財産から祭祀・供養のための費用を出すことは、一般には問題になりにくいと解されています。ただし、どの行為が「処分」にあたるかの判断は事案ごとに異なり、裁判例の評価も分かれる領域です。相続放棄を予定している・した方が墓じまい費用を支出する際は、金額や出どころを問わず、必ず事前に弁護士・司法書士にご確認ください。
誤解3: 誰も承継しなければお墓は市町村が片づけてくれる
「全員が放棄して誰も継がなければ、行政がきれいに片づけてくれる」というイメージも誤解です。実際には、管理されなくなったお墓は長期間放置された後、墓地埋葬法施行規則の定める手続き(縁故者に対する官報公告と立札の掲示を1年間行う)を経て、無縁墳墓として改葬される可能性がある、という流れをたどります。その場合ご遺骨は合祀され、取り出せなくなります。時間もかかり、親族の心情面のしこりも残りやすい結末です。詳しくは無縁墓は撤去されたらどうなる?をご覧ください。
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相続放棄した人が墓じまいを進める場合の注意点
放棄をしたうえで墓じまいを進める場合、押さえるべき実務上の注意は3つです。
費用は相続財産からではなく自分の財産から出す
誤解2の実務版です。墓じまいの費用(撤去工事・永代供養料・お布施など)は、亡くなった方の預金や遺品の売却代金からではなく、自分または費用を分担する親族自身の財産から支払うのが安全側の対応とされています。親族で出し合う場合は、誰がいくら負担するかを見積書ベースで事前に合意しておきましょう。分担の決め方は墓じまい費用の兄弟分担はどう決める?を参考にしてください。
遺品・墓地の契約書類の扱いに注意する
墓じまいには墓地使用許可証(永代使用承諾書)などの書類確認が必要ですが、相続放棄を予定している段階では、遺品の整理・処分に慎重さが求められます。財産的価値のある遺品の処分は相続財産の処分と評価されるおそれがあるためです。書類を探して保全すること自体は必要な行為ですが、「どこまでが許される保存行為か」の線引きは事案によります。遺品整理と並行する場合は、着手前に専門家へ確認しておくと安心です。
判断に迷ったら弁護士・司法書士に確認する
ここまで繰り返してきたとおり、相続放棄の効力に関わる判断(費用の支出・遺品の扱い・期限の管理など)は、この記事では結論を出せない専門領域です。相続放棄には原則3か月の期限(民法915条)もあるため、迷ったら早めに弁護士・司法書士へ。費用面が不安な場合は法テラス(日本司法支援センター)の利用も検討できます。そのうえで、墓じまいの実務——撤去工事・供養先探し・段取り——は当窓口がお手伝いします。「法律は専門家、実務は専門窓口」という役割分担が、最も安全で速い進め方です。
誰も継がない場合にお墓がたどる道——無縁墓
相続人全員が放棄し、祭祀承継者も決まらないままお墓が放置されるとどうなるか、現実の流れを確認しておきましょう。管理料の支払いが止まり、墓地管理者が使用者・縁故者と連絡が取れない状態が続くと、規約に基づく使用権の取り消しを経て、無縁墳墓としての改葬手続きに進む可能性があります。ご遺骨は供養塔などに合祀され、以後個別に取り出すことはできません。法的に「違法な放置」を問われることは通常ありませんが、いとこや遠縁の親族から「あの家の墓を放っておいた」と心情的なしこりを残すケースは現実に起きています。承継者がいない場合の選択肢はお墓を継ぐ人がいないとどうなる?で、放置のリスク全体は墓じまいしないとどうなる?で解説しています。
相続放棄後の墓じまいの進め方(8ステップ)
法律面の確認を済ませたら、実務は通常の墓じまいとほぼ同じです。8ステップで整理します。
- 弁護士・司法書士に、放棄への影響(費用の出どころ等)を確認する
- 親族と、承継者・費用分担・供養の方針を合意する
- 墓地管理者へ事情を連絡し、必要書類と手続きを確認する
- ご遺骨の供養先(永代供養・樹木葬・送骨など)を決める
- お墓の所在地の市区町村に改葬許可を申請する(書類が不安なら提携行政書士をご紹介。お客様と直接契約・報酬目安3.3万円〜)
- 閉眼供養を行う
- 撤去工事を行い、墓地を返還する
- 新しい供養先へ納骨して完了
費用の目安は、当窓口の定額プランで1㎡まで198,000円・2㎡まで298,000円(税込)+供養先の費用(合祀型5万円〜など)。ご契約後に着手金、残額は工事の完成をご確認後で、追加費用はいただいていません。全体の流れは墓じまいの流れと墓じまいの費用をご覧ください。
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相続放棄とお墓について、特に多い3つの質問にお答えします。
Q. 墓地の管理料の請求は放棄後も来ますか?
A. 墓地の管理料は、相続財産の債務というより墓地使用契約・規約に基づくものであるため、相続放棄をしても請求の連絡が続く場合があります。誰が支払い義務を負うかは契約内容や承継の状況によって異なるため、放置せず、墓地管理者に事情(相続放棄をしたこと・承継の予定)を連絡して整理することをおすすめします。対応に迷う場合や請求に納得できない場合は、弁護士・司法書士にご相談ください。
Q. 兄弟全員が相続放棄しました。お墓はどうなりますか?
A. 祭祀財産の承継は相続放棄とは別の仕組みで決まるため、全員が放棄していても、話し合いで誰かが祭祀承継者となってお墓を引き継ぐ(そのうえで維持するか墓じまいするかを決める)ことは可能とされています。誰も承継しなければ、お墓は将来的に無縁墳墓として整理される方向に進みます。親族間で決められない場合は、家庭裁判所の調停・審判という手続きもあります(民法897条2項)。
Q. 放棄の手続き前に墓じまいをしてもいいですか?
A. 慎重な対応をおすすめします。放棄前の墓じまいは、費用の出どころや遺品・書類の扱い次第で、相続財産の処分(法定単純承認)と評価されるリスクをはらむためです。原則として、①まず専門家に相談し、②放棄の手続きを済ませ、③そのうえで自分の財産から費用を出して墓じまいを進める、という順番が安全側です。3か月の熟慮期間との兼ね合いも含め、必ず事前に弁護士・司法書士へご確認ください。
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まとめ: 相続放棄とお墓は別問題——実務は早めに整理を
お墓は祭祀財産として相続財産と別扱いとされ、相続放棄をしても承継は可能——これが基本の整理です。注意すべきは、①放棄しても管理の問題は自動では消えない、②費用は相続財産から出さない(出どころは事前に専門家確認)、③放置の先には無縁改葬がある、の3点。放棄の効力に関わる法律判断は弁護士・司法書士へ、墓じまいの実務(撤去・供養先・段取り)は当窓口の無料相談へ、という役割分担で進めるのが安全です。当窓口は定額198,000円/298,000円(税込)・着手金+完成後の残額払い・追加費用なしで対応しています。
参考文献
- e-Gov法令検索「民法」第896条・第897条・第915条・第921条・第939条
- e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」第3条(無縁墳墓の改葬)
- 日本司法支援センター 法テラス
- 東京弁護士会「お墓は誰が承継するのですか」
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この記事の監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士|東京司法書士会 第7135号・東京都行政書士会 第11924号
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続手続きや改葬・墓じまいに関わる法律手続き、名義変更などを担当する。安心墓じまいの提携司法書士・行政書士。当サイトでは、改葬許可申請などの行政手続きと、相続・名義に関する法務部分を監修しています(墓じまいの施工内容・費用は監修対象外)。 監修者プロフィール・監修範囲 →
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■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 改葬・墓じまいの手続き
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理

