「実家のお墓を長年管理できていない。撤去されたら遺骨はどうなるのだろう」。そんな不安をお持ちの方へ。無縁墓の撤去(無縁改葬)には、官報への公告と立札の1年間掲示という法律で定められた手続きがあり、ある日突然更地にされることはありません。ただし、撤去後の遺骨は無縁塚などに合祀され、取り戻すことはできなくなります。この記事では、無縁墓が撤去されるまでの法的手続きと撤去後の遺骨・墓石・区画の行方、そして無縁墓にしないための対策を、一次情報に基づいて解説します。
無縁墓とは?撤去の話の前に知っておきたい定義と現状
まず、無縁墓の法律上の定義と、全国でどれほど増えているのかを、法令と国の調査に基づいて整理します。
無縁墳墓の法律上の定義(墓地埋葬法施行規則3条)
「無縁墓」は俗称で、法令上は「無縁墳墓等」と呼ばれます。墓地、埋葬等に関する法律施行規則第3条は、無縁墳墓等を「死亡者の縁故者がない墳墓又は納骨堂」と定義しています。ポイントは「縁故者がいない」ことが要件である点です。管理料を滞納しているだけ、お参りをしていないだけで直ちに無縁墳墓になるわけではなく、墓地管理者や自治体が戸籍調査などを尽くしても縁故者が見つからない場合に、無縁と判断されます。
公営墓地を持つ市町村の約6割に無縁墳墓。総務省調査が示す現状
総務省が2023年に公表した調査結果によると、公営墓地・納骨堂を有する765市町村のうち58.2%にあたる445市町村で、無縁墳墓等が1区画以上存在(疑いを含む)していました。人口30万人以上の市では78.9%にのぼります。少子化や承継者の不在、都市部への人口移動を背景に、無縁墓は全国的な課題となっており、決して珍しい話ではありません。
管理料の滞納からすぐに撤去されるわけではない
実際の運用では、管理料の滞納→督促→使用者・縁故者の調査→無縁の判断、という経過をたどるのが一般的で、数年単位の時間がかかります。同調査では、滞納3年程度や、使用者死亡後5年間承継の申し出がない場合などを目安とする自治体の例が紹介されていますが、目安に該当しただけで直ちに撤去されるわけではありません。「ある日突然お墓が消える」ことはない、とまずは落ち着いて考えましょう。
無縁墓が撤去されるまでの法的手続き(無縁改葬)
墓地管理者や自治体が無縁墓を撤去するには、法律で定められた手続き(無縁改葬)を踏む必要があります。流れは次のとおりです。
- 使用者・縁故者の調査を行う
- 官報に公告を掲載する
- 墳墓の見やすい場所に立札を1年間掲示する
- 申し出がなければ市区町村長に改葬許可を申請する
- 許可後、遺骨の改葬と墓石の撤去を行う
官報への掲載と立札の設置。公告期間は1年間
施行規則3条に基づき、管理者は、死亡者の本籍・氏名などとあわせて「墓地使用者等・死亡者の縁故者・無縁墳墓等に関する権利を有する者は1年以内に申し出るべき旨」を官報に掲載し、かつ、無縁墳墓等の見やすい場所に設置した立札に1年間掲示して公告しなければなりません。官報と現地の立札という2つの方法で、縁故者に名乗り出る機会を1年間確保する仕組みです。期間の計算は官報掲載日の翌日から起算するのが一般的な取り扱いです。
1年間申し出がなければ改葬許可申請→使用権取り消しへ
公告期間中に申し出がなければ、管理者は、埋蔵の事実を証する書面に加え、無縁墳墓等の写真・位置図、公告して申し出がなかった旨を記載した書面、官報の写しと立札の写真などを添えて、市区町村長に改葬許可を申請できます。許可が下りると、遺骨の改葬と墓石の撤去が行われ、墓地使用権は取り消されます。公営墓地では、条例に基づく手続きを別途踏む自治体もあります。
実際には手続き・費用の負担が重く、撤去が進みにくい実態
無縁改葬の公告費用・撤去工事費・合祀先の確保は、すべて墓地管理者(寺院・霊園・自治体)の負担となるのが実情です。そのため、無縁墓と分かっていても長期間そのまま置かれているケースが少なくありません。ただし、これは「放置しても大丈夫」という意味ではなく、管理者や他の利用者、地域の負担になり続けているということでもあります。
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撤去された後、遺骨・墓石・区画はどうなる?
無縁改葬が実施された後、遺骨・墓石・区画がそれぞれどうなるのかを具体的に見ていきます。
| 対象 | 撤去後の行き先 | 元に戻せるか |
|---|---|---|
| 遺骨 | 無縁塚・合葬墓へ合祀 | 合祀後の個別の返還は不可 |
| 墓石 | 供養のうえ解体・処分 | 戻らない |
| 区画 | 整地後、墓地へ返還・再貸付 | 使用権は取り消し |
遺骨は無縁塚・合葬墓に合祀される。個別の返還はできなくなる
取り出された遺骨は、墓地内または自治体等が用意する無縁塚・合葬墓に、他の方の遺骨と一緒に合祀されるのが一般的です。合祀では骨壺から出して埋蔵されるため、後からどの遺骨か識別することができず、個別の返還・改葬は事実上不可能になります。これが無縁改葬のもっとも重要なポイントです。自分の意思で供養先を選べるのは、無縁墓になる前だけです。
墓石は供養のうえ解体・処分される
撤去された墓石は、魂抜きなどの供養を経て解体され、産業廃棄物として適正に処分されるのが一般的です。一部が供養塔などに活用される例もありますが、縁故者の手元に戻ることはありません。
区画は墓地に返還され、再貸付される
使用権が取り消された区画は、整地されたうえで墓地に返還され、新しい使用者へ再貸付されます。限られた墓地を将来にわたって維持していくための制度であり、管理者が一方的に利益を得る仕組みではない点も知っておきたいところです。
撤去後に縁故者だとわかったら?できること・できないこと
「久しぶりに墓参りに行ったら、お墓がなくなっていた」。そんなときに取れる行動と、その限界を整理します。
合祀後の遺骨の特定・返還は事実上不可能
先に結論をお伝えすると、すでに合祀された遺骨を特定して返してもらうことは、事実上できません。他の方の遺骨と一緒に埋蔵されているためです。だからこそ、お墓の管理が難しくなった時点で、無縁化する前に自分の意思で行動することが大切になります。
合祀先を確認してお参りを続けることはできる
一方で、墓地管理者や自治体に照会すれば、遺骨がどの無縁塚・合葬墓に合祀されたかは確認できるのが一般的です。合祀先が分かれば、そこへお参りを続けることはできます。手を合わせる場所があることは、心の区切りとしても大きな意味があります。
管理料の滞納分などを請求される可能性
使用者やその承継者であることが判明した場合、滞納していた管理料等の精算を求められることがあります。取り扱いは墓地の使用規則や契約内容によって異なるため、管理者に確認しましょう。
無縁墓にしないために。今からできる3つの選択肢
無縁改葬では、遺骨の行き先を選ぶことはできません。そうなる前に、今からできる選択肢を3つ紹介します。
元気なうちに自分の意思で墓じまいをする
自分で墓じまいをすれば、遺骨の供養先を自分で選び、費用も納得のいく形で計画できます。放置して無縁改葬に至った場合との違いは、「選択権が自分にあるかどうか」です。放置した場合のリスクの全体像は墓じまいしないとどうなる?を、始める時期の考え方は墓じまいの時期・タイミングをご覧ください。
永代供養墓・合葬墓へ改葬して供養をつなぐ
承継者がいなくても、霊園や寺院が供養と管理を続けてくれる永代供養墓・公営の合葬墓へ改葬すれば、先祖の供養は途切れません。合祀型なら費用も抑えられます。供養先の種類と選び方は改葬・供養先の選び方と墓じまいで遺骨は処分できない?行き先7つ、納骨後の供養の実際は永代供養のその後で解説しています。
遠方・多忙でも墓じまいは進められる
「お墓が遠くて動けない」という方も、郵送での改葬許可申請や写真での見積もり・完了報告を使えば、現地に行かずに墓じまいを進められます。詳しくは遠方で立ち会えない場合の進め方をご覧ください。安心墓じまいの基本プランは298,000円(税込・2㎡まで・石塔1基)、ご契約後に着手金、残額は工事の完成をご確認後です。自治体の助成制度は墓じまい補助金データベースで確認できます。
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まとめ:無縁化する前の墓じまいが、先祖の供養を守る選択
無縁墓の撤去には、官報公告と立札の1年間掲示という法定手続きがあり、突然行われることはありません。しかし、撤去後の遺骨は合祀され、取り戻すことはできなくなります。遺骨の行き先を自分で選べるのは、無縁墓になる前だけです。お墓の管理に不安を感じたら、無縁化する前の墓じまいと永代供養への改葬が、先祖の供養を守る前向きな選択になります。安心墓じまいでは、段取りのご案内・制度調査・お見積もりをすべて無料で承っています。墓じまいの流れとよくある質問をご覧のうえ、お気軽に無料相談をご利用ください。
参考文献
- e-Gov法令検索「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」
- 厚生労働省「墓地、埋葬等に関する法律の概要」
- 総務省「墓地行政に関する調査 結果報告書(公営墓地・納骨堂における無縁墳墓等の現状と課題)」
- 寝屋川市「無縁墳墓等の改葬許可申請手続き」
- 日進市「無縁化した墓地を改葬するとき」
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