
久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士|東京司法書士会 第7135号・東京都行政書士会 第11924号
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続手続きや改葬・墓じまいに関わる法律手続き、名義変更などを担当する。安心墓じまいの提携司法書士・行政書士。当サイトでは、改葬許可申請などの行政手続きと、相続・名義に関する法務部分を監修しています(墓じまいの施工内容・費用は監修対象外)。 監修者プロフィール・監修範囲 →
監修者プロフィールの詳細
■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 改葬・墓じまいの手続き
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理
生活保護を受給しながら墓じまいをしたい方に向けて、費用の工面方法をまとめました。結論から言うと、生活保護の「葬祭扶助」は墓じまい(墓石撤去・改葬)の費用には使えません。葬祭扶助は亡くなった方の火葬・埋葬にかかる最低限の費用を支援する制度で、既存のお墓を撤去して更地に戻す墓じまいとは対象が異なるためです。ただし、生活保護を受給していても墓じまい自体は可能で、福祉事務所への相談・自治体の返還金や補助金・最小費用ルートの組み合わせで、自己負担をゼロに近づけられるケースもあります。この記事では、根拠となる制度の説明から、実際にケースワーカーへ何を伝えればよいか、自治体の補助金の実例、自分の場合はどのルートで進めるべきかまで、具体的な数字とともに解説します。印刷して使えるチェックリストと、費用比較表もあわせて掲載していますので、これから相談窓口に足を運ぶ前の準備として役立ててください。
結論:葬祭扶助は使えないが、生活保護でも墓じまいはできる
まず押さえておきたいのは次の3点です。
- 葬祭扶助は「亡くなった方の火葬・埋葬」が対象で、墓じまい(墓石の撤去・改葬)には使えない
- 生活保護を理由に墓じまいを拒否されることはなく、資産管理の観点からむしろ自治体が相談に乗ってくれることが多い
- 自治体の返還金制度・合祀墓や送骨などの最小費用ルート・親族との分担を組み合わせれば、実費を数万円台まで圧縮できる場合がある
逆に言えば、何も調べずに石材店や墓じまい代行業者へ一括見積もりを依頼するだけでは、使える制度を見落として自己負担が膨らんでしまうこともあります。以下で、それぞれの根拠と具体的な進め方を解説します。
そもそも葬祭扶助とは?墓じまいが対象外である理由
葬祭扶助の対象範囲(検案・運搬・火葬・埋葬・納骨)
葬祭扶助は生活保護法(第18条)に基づく扶助のひとつで、生活保護受給者が亡くなった際に、遺体の検案・運搬・火葬・埋葬・納骨(収骨まで)にかかる最低限の費用を自治体が負担する制度です。葬儀の形式は通夜や告別式を行わない「直葬(火葬式)」が基本で、儀礼的な費用は対象外です。また、葬祭扶助だけを単独で受給できる「単給」の仕組みがあり、喪主本人が生活保護を受けていなくても、経済的に葬儀費用を用意できない場合には申請できます。支給を受けるには、原則として葬儀の前に福祉事務所へ申請し、承認を得る必要がある点にも注意してください。
墓じまい(改葬・墓石撤去)はなぜ対象外なのか
墓じまいは「すでに納骨されているお墓を撤去し、遺骨を別の場所に移す(改葬する)」手続きです。対象となるのは、埋葬時ではなく既存の墓地の原状回復・墓石解体・離檀・改葬先の確保といった費用で、葬祭扶助が想定する「死亡時の最低限の葬送」とは性質が異なります。そのため、生活保護制度の中に墓じまい専用の扶助項目はなく、葬祭扶助を墓じまい費用に充てることはできません。この点を勘違いしたまま費用の見積もりを進めてしまうと、想定外の自己負担が発生するため注意が必要です。
なお、生活保護の各種扶助(生活扶助・住宅扶助・医療扶助など)にも墓じまい費用を対象とする項目はありません。墓じまい費用は原則として本人・親族の負担で用意する必要がある、という前提を最初に理解しておくことが、無理のない資金計画の第一歩になります。墓じまい全体の費用相場は墓じまいの費用相場で詳しく解説しています。一般的な総額は35万〜150万円程度ですが、後述の最小費用ルートを使えば大きく圧縮できます。
生活保護と資産活用の原則、お墓はどう扱われるか
生活保護法には「資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用すること」を求める資産活用の原則があります。この原則から、生活保護の申請・受給にあたって、遠方の不動産や高額な資産は処分(売却・解約)を求められることが一般的です。一方で、お墓(墓地の使用権・墓石)は市場で自由に売買できる資産ではなく、祭祀財産として扱われるため、生活保護の資産活用の対象として処分を強制されることは通常ありません。つまり、生活保護を受けているからといって「お墓を残しておくと不利になる」わけではなく、管理料の負担が生活を圧迫している場合に、本人の意思で墓じまいを選ぶかどうかという話になります。
ただし、墓地が遠方にあり、管理料の支払いや通院・介護との兼ね合いで維持が難しい場合は、生活の安定という観点からも早めに整理を検討したほうがよいケースがあります。この判断についても、自己判断で進める前に、担当ケースワーカーに率直に相談することをおすすめします。特に毎年の管理料が数千円〜数万円であっても、年金や生活保護費のみで生活している方にとっては継続的な負担になりやすいため、「払い続けられるかどうか」という視点で見直してみることが大切です。
生活保護受給中の墓じまい費用をどう工面するか
まずケースワーカー・福祉事務所に相談する
墓じまいの費用を自力で用意できない場合、最初にすべきことは石材店探しではなく、担当ケースワーカーや福祉事務所への相談です。生活保護は資産の活用が前提となる制度のため、遠方にあり管理が困難なお墓や、継承者がいないお墓を放置すると「無縁墓」化のリスクがある旨を具体的に伝えると、相談がスムーズに進みます。相談は電話でも面談でもよく、担当ケースワーカーの定期訪問の際に切り出す形でも問題ありません。伝えるべきポイントは次の3つです。
- お墓の管理料・維持費の負担が生活を圧迫していること
- 承継者がおらず、将来的に無縁墓になる懸念があること
- 遠方にあり、通院・介護などの事情で墓参・管理が困難であること
福祉事務所が墓じまいの費用そのものを直接支給する制度はありませんが、生活状況の把握とあわせて、自治体独自の減免・返還金制度や、社会福祉協議会が窓口となる生活福祉資金貸付制度(借入となるため返済計画の検討が必要です)について案内を受けられる場合があります。まずは背景事情を正直に共有することが、選択肢を広げる第一歩です。相談の際は、口頭だけでなく現在の墓地の使用許可証や管理料の請求書など、状況が分かる資料を持参するとスムーズです。
自治体の返還金・補助金を確認する(市川市の例)
一部の自治体では、市営霊園の墓地を返還する際に使用料の一部が戻る「返還金制度」や、原状回復費用を助成する制度を設けています。たとえば千葉県市川市では「市川市霊園一般墓地返還促進事業」として、使用許可から3年以内に未使用(更地)のまま返還した場合は納付済み使用料の2分の1、それ以外の場合でも4分の1が返還されるほか、墓石撤去などの原状回復費用についても全部または一部の助成を受けられる制度があります。窓口は市川市保健部斎場霊園管理課の霊園管理事務所です。
このような制度はすべての自治体にあるわけではなく、内容も自治体ごとに異なります。まずはお墓がある自治体の霊園管理担当課(市営霊園の場合)または福祉事務所に、返還金・補助金制度の有無を確認しましょう。制度の有無を確認する際は、電話でも構いませんが「墓地使用許可証の番号」「使用開始年」「墓地の面積」を手元に用意しておくと、案内を受けやすくなります。制度がある自治体の例は墓じまいの補助金でも紹介しています。
群馬県太田市でも、市営の八王子山公園墓地を対象に、墓石・外柵などの撤去費用を助成する制度があります。助成額の上限は「支払った撤去費用の総額」または「20万円」のいずれか低い方とされており、無縁墓対策の一環として設けられています。市川市・太田市のように、公営霊園を運営する自治体では同種の制度を設けている例があるため、公営霊園にお墓がある場合はまず確認する価値があります。代表的な例を表にまとめました。
| 自治体(霊園) | 制度の内容 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 千葉県市川市(市川市霊園) | 使用料の返還+原状回復費用の助成 | 使用料の1/4〜1/2+撤去費助成 |
| 群馬県太田市(八王子山公園墓地) | 墓石・外柵の撤去費用助成 | 撤去費用実額または20万円の低い方 |
制度の有無や条件は年度によって変更される場合があるため、必ず現時点の情報を自治体公式サイトまたは窓口で確認してください。表にない自治体でも、独自の減免・助成制度を設けている場合があるため、「墓地返還」「原状回復費用」「助成」といったキーワードで自治体公式サイトを検索するか、窓口へ直接問い合わせるのが確実です。
お墓の広さや場所から、費用の目安がわかります。
かんたんな質問に答えるだけで、墓じまいの費用イメージがすぐに確認できます。匿名・無料でご利用いただけるシミュレーターをご用意しました。
無料費用シミュレーターを試す→最小費用ルート(合祀・送骨)で改葬先の費用を抑える
墓じまいの総額のうち、金額の振れ幅が大きいのが「改葬先(遺骨の新しい供養先)」の費用です。一般墓や樹木葬を選ぶと数十万円かかりますが、次のような選択肢を選べば数万円台に抑えられます。
- 合祀型の永代供養墓:他の方の遺骨と合わせて埋葬するため、3万〜10万円程度と最も安価
- ゆうパックなどを使った送骨サービス:現地に行かず郵送で納骨でき、交通費もかからない
- 公営霊園の合葬墓:自治体によっては無料〜数千円程度で利用できる場合がある
送骨の具体的な流れは改葬先の選び方で解説しています。撤去費用についても、墓地の面積が小さいほど安くなるため、複数の石材店・墓じまい代行業者から相見積もりを取ることが欠かせません。相見積もりを取る際は「墓石撤去」「閉眼供養のお布施」「離檀料」「改葬先費用」の内訳を分けて提示してもらい、総額だけでなく項目ごとに比較すると、削減できる部分が見えやすくなります。同じ面積・条件でも業者によって見積額に数万円の差が出ることは珍しくないため、面倒でも2〜3社は比較することをおすすめします。
親族との費用分担を早めに話し合う
墓じまいの費用を誰が負担するかについて法律上の決まりはありませんが、実務上はお墓の承継者(祭祀承継者)が中心となって進め、兄弟姉妹や親族で分担するケースが多く見られます。生活保護を受給中で費用を用意できない場合は、早い段階で親族に事情を共有し、次のような分担方法を相談しておくとトラブルを避けやすくなります。
- 撤去費用・改葬先費用・行政書士報酬など、項目ごとに負担者を分ける
- 一括ではなく、着手金と完成後の残額で分割して負担する
- 離檀料が発生する場合は、寺院との窓口役を親族の中で決めておく
親族との話し合いが難航しそうな場合は、感情的な対立を避けるためにも、費用の内訳や見積書などの客観的な資料を提示しながら進めることをおすすめします。承継者が生活保護受給者本人しかいない場合は、親族に頼れないケースもあるため、その場合こそ福祉事務所や自治体の制度、最小費用ルートの活用がより重要になります。
生活福祉資金貸付制度は選択肢になるか
各都道府県の社会福祉協議会が窓口となる「生活福祉資金貸付制度」には、一時的な資金需要に対応する貸付メニューがあります。ただし、これは名称のとおり「貸付(借入)」であり、返済が前提となる点に注意が必要です。生活保護受給中は収入が限られているため、借入を検討する際は、返済計画が現実的に成り立つかを慎重に見極める必要があります。制度の詳細や対象要件は自治体・年度によって異なるため、利用を検討する場合は、まず担当ケースワーカーを通じて地域の社会福祉協議会に相談してください。
生活保護受給中によくある誤解
誤解1:葬祭扶助でお墓を撤去してもらえる
「生活保護を受けているのだから、葬祭扶助でお墓も片付けてもらえるのでは」と考える方が少なくありませんが、これは誤解です。葬祭扶助はあくまで死亡時の火葬・埋葬に関する費用のみを対象としており、既存の墓地の解体・原状回復・改葬先の確保にかかる費用は含まれません。この誤解のまま業者に問い合わせて初めて、自己負担が必要だと知るケースもあるため、早い段階で正しい制度理解を持つことが大切です。名称が似ている「葬祭扶助」と「墓じまいの補助金」は、根拠となる制度も窓口もまったく異なるものだと覚えておいてください。
誤解2:生活保護を理由に墓じまい自体ができない
逆に「生活保護を受けているとお墓を動かす手続きができない」と誤解しているケースもあります。改葬許可申請の要件に生活保護の受給有無は関係なく、必要書類(埋葬証明・受入証明)が揃えば、生活保護受給者でも通常どおり申請・許可を受けられます。費用の心配から手続き自体を諦めてしまう前に、まずは福祉事務所や墓じまい業者に無料で相談してみることをおすすめします。相談したからといって、すぐに費用の支払いを求められるわけではなく、多くの業者は現地確認や見積もりまでは無料で対応しています。
費用を抑えて進めるための手順チェックリスト
ここまでの内容を踏まえ、実際に動き出す際に使える、生活保護受給中に墓じまいを進める際のチェックリストをまとめました。印刷してそのまま使えます。上から順にチェックしていけば、相談先の抜け漏れを防げます。
- □ 担当ケースワーカーに管理負担・承継者不在の事情を相談した
- □ お墓がある自治体(霊園管理課・福祉事務所)に返還金・補助金制度の有無を確認した
- □ 現在の墓地管理者(寺院・霊園)に離檀料や返還手続きの条件を確認した
- □ 改葬先を合祀墓・送骨など最小費用のルートで検討した
- □ 石材店・墓じまい代行業者から2〜3社の相見積もりを取った
- □ 親族と費用分担・進め方について話し合った
- □ 改葬許可申請に必要な書類(埋葬証明・受入証明)を確認した
- □ 書類作成が難しい場合、提携行政書士の紹介を依頼するか検討した
- □ 支払い方法(着手金・残額払いなど分割の可否)を業者に確認した
改葬許可申請の書類は、現在の墓地管理者から埋葬証明を受け取り、改葬先の受入証明とあわせて役所へ提出する流れです。役所窓口は、現在お墓がある市区町村の担当課(多くは市民課・戸籍課・環境衛生課などの名称)で、手数料は無料としている自治体が大半です。書類集めが難しい場合は、提携行政書士のご紹介が可能です(ご契約・報酬は行政書士と直接のお取り決めとなります)。申請全体の流れは改葬許可申請の方法もあわせてご確認ください。
手続き全体の流れ5ステップ
- 福祉事務所・ケースワーカーに相談し、自治体の返還金・補助金制度の有無を確認する
- 改葬先(合祀墓・送骨など最小費用のルート)を決めて契約する
- 現在の墓地管理者から埋葬証明をもらい、区市町村役場に改葬許可申請書を提出する
- 複数業者から相見積もりを取り、閉眼供養・墓石撤去・整地を行う
- 改葬先に許可証を提出して納骨し、返還金・助成金があれば申請する
墓じまいをせず放置するとどうなるか
費用の工面が難しく、墓じまいを先延ばしにしたくなる気持ちは自然なことです。しかし、管理料の滞納が一定期間(多くの墓地で1〜5年程度、規約により異なります)続くと、墓地管理者は官報公告などの所定の手続きを経たうえで、使用権を取り消し、遺骨を合葬墓に移すことができるとされています。これを「無縁墓」としての処理といいます。
無縁墓として処理されると、遺骨は他の無縁仏とまとめて合葬されるため、自分の意思で改葬先を選ぶことはできなくなります。管理料の負担が厳しい場合こそ、自治体の制度や最小費用ルートを活用して、早めに自分の意思で墓じまいを進めたほうが、結果的に費用も気持ちの負担も抑えられるケースが多いといえます。判断に迷う場合は、放置するリスクと今すぐ動く場合の費用を天秤にかけながら、福祉事務所に相談してみてください。
ケース別シミュレーション:自分の場合はどのルートか
ケース1:返還金・補助金制度がある自治体の市営霊園
お墓が市営霊園にあり、その自治体に返還金・原状回復助成の制度がある場合は、最も自己負担を抑えやすいケースです。まず霊園管理担当課に制度の有無と申請条件(使用年数・面積など)を確認し、原状回復(墓石撤去)費用の助成対象になるかを確認します。改葬先を合祀墓や送骨にすれば、市川市の例のように使用料の一部返還と助成を合わせることで、実費が数万円程度まで下がる可能性があります。福祉事務所には、制度を利用する予定であることを事前に共有しておくとよいでしょう。
目安として、墓石撤去費用が20万円程度、送骨で改葬先費用が3万円程度かかったとしても、太田市の例のように撤去費用の上限20万円の助成が受けられれば、実質的な自己負担は数万円まで圧縮できる可能性があります。実際の金額は面積・撤去業者の見積もり・自治体の助成上限によって変わるため、必ず個別に見積もりと制度内容を確認してください。
ケース2:民営・寺院墓地で補助金制度がない自治体
補助金制度がない自治体や寺院墓地の場合は、撤去費用・離檀料が全額自己負担になりやすいケースです。この場合は複数業者の相見積もりで撤去費用を圧縮しつつ、改葬先を合祀墓・送骨に絞り、親族との分担を早めに相談することが重要になります。離檀料については、寺院に直接減額や分割払いを相談できるケースもあるため、住職へ生活状況を丁寧に伝えることが交渉の糸口になります。福祉事務所には制度の有無だけでなく、生活福祉資金貸付制度など他の支援策についても相談してみましょう。
このケースでは、墓石撤去費用20万円前後、離檀料3万〜20万円程度、改葬先を送骨にした場合の費用3万〜5万円程度を合計すると、総額は数十万円規模になることもあります。相見積もりによる撤去費用の圧縮と、着手金+残額払いなど分割対応が可能な業者を選ぶことで、一度に用意する金額を抑える工夫が現実的な対策になります。また、離檀料については寺院との関係性や地域の慣習によって金額の幅が大きいため、複数の親族に過去の経緯を聞いておくと、交渉時の参考になることがあります。
ケース3:継承者がおらず、将来の無縁墓化が心配なケース
自分の代で承継者がいない場合、費用面だけでなく「今のうちに整理しておく」判断も重要です。承継者がいないまま管理料の滞納が続くと、墓地管理者側の手続きにより無縁墓として扱われ、最終的に合葬されてしまうこともあります。そうなる前に、福祉事務所やケースワーカーに早めに相談し、自治体の返還金制度の有無を確認したうえで、合祀墓や永代供養付きの送骨サービスを選べば、自分の意思で供養先を決めたうえで、将来的な無縁墓化を避けられます。
この場合、最終的な供養先を合祀墓や永代供養付きの送骨サービスにすることで、自分が亡くなった後も継続的な管理料の負担が発生しない形に整理できます。将来にわたって管理料を払い続ける人がいない、という事情は福祉事務所への相談でも重要な判断材料になるため、遠慮せず状況を伝えてください。永代供養付きの供養先であれば、一度手続きを終えれば以降の管理料が発生しない場合が多く、「払い続けられなくなる不安」自体をなくせる点も安心材料になります。
業者選びで気をつけたいポイント
費用を抑えたい場合ほど、業者選びは慎重に行う必要があります。生活保護受給中に墓じまい業者を選ぶ際は、次の3点を確認してください。
- 総額表示か、追加費用が発生する可能性があるかを契約前に確認する(面積超過・特殊な立地での追加費用の有無)
- 支払いタイミング(着手金の有無、完成後の残額払いが可能か)を確認する
- 改葬許可申請の書類収集を「代行」とうたう業者には注意する。書類作成の代理は行政書士の独占業務であり、無資格者が報酬を得て代行することはできません
安心墓じまいでは、改葬許可申請の書類収集が難しい場合、提携行政書士をご紹介しています(お客様と行政書士との直接契約となり、報酬目安は33,000円〜です)。無資格の業者が申請を代行すると謳っている場合は、依頼を避けることをおすすめします。
改葬先ルート別の費用比較表
改葬先の選び方によって費用は大きく変わります。生活保護受給中に検討しやすい順に並べました。
| 改葬先ルート | 費用目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 公営霊園の合葬墓 | 無料〜数千円程度 | 自治体により対応が異なる。まず窓口で要確認 |
| 合祀型の永代供養墓(民間) | 3万〜10万円 | 他の方の遺骨と合わせて埋葬。最も一般的な低価格ルート |
| 送骨サービス(ゆうパック利用) | 3万〜5万円程度 | 現地に行かず郵送で納骨。交通費がかからない |
| 樹木葬 | 20万〜80万円 | 継承者不要だが、合祀墓より高め |
| 納骨堂 | 20万〜100万円 | 屋内で参拝しやすいが費用は高め |
撤去費用を含めた墓じまい全体の内訳は墓じまいの費用相場で解説しています。安心墓じまいの基本プランは墓じまい一式198,000円(税込)〜で、追加費用はありません。お支払いは着手金と、工事完了後の残額払いに分かれており、まとまった費用を先に用意する必要がない点も、費用の工面が難しい方の負担軽減につながります。詳しくは料金プランをご覧ください。
相談窓口の早見表
墓じまいの相談先は1つではなく、内容によって窓口が分かれています。誰に何を相談すればよいか迷ったときのために、窓口ごとの役割を整理しました。まずは上から順に連絡していくと、抜け漏れなく制度を確認できます。
| 窓口 | 相談できる内容 |
|---|---|
| 担当ケースワーカー・福祉事務所 | 生活状況の共有、生活福祉資金貸付制度など支援策の案内 |
| お墓がある自治体の霊園管理担当課 | 返還金・原状回復助成など、その自治体独自の補助制度の有無 |
| 現在の墓地管理者(寺院・霊園) | 離檀料の目安、返還手続きの条件、埋葬証明の発行 |
| 墓じまい代行業者 | 撤去費用の見積もり、支払い方法、改葬先の提案 |
| 提携行政書士(紹介制) | 改葬許可申請書類の作成サポート(お客様と直接契約) |
よくある質問
Q. 葬祭扶助を墓じまい費用に流用できますか?
できません。葬祭扶助は亡くなった方の火葬・埋葬にかかる最低限の費用を対象とする制度で、既存のお墓を撤去・改葬する墓じまいの費用は対象外です。混同しないよう注意してください。
Q. 生活保護を受けていることを理由に墓じまいを断られることはありますか?
墓地管理者や業者が生活保護受給を理由に依頼自体を断ることは通常ありません。ただし費用の分割払いや自治体の制度活用については、事前に相談しておくとスムーズです。
Q. 福祉事務所に相談すると生活保護費が減らされることはありますか?
お墓の管理料負担や無縁墓化のリスクについて相談すること自体で保護費が減額されるわけではありません。むしろ資産・負担状況を正確に伝えることで、利用できる制度の案内を受けやすくなります。個別の判断は担当ケースワーカーにご確認ください。
Q. 改葬許可の申請は自分でやらないといけませんか?
申請書類の作成自体は代行できませんが、書類集めや記入が難しい場合は提携行政書士をご紹介できます(ご契約・報酬は行政書士と直接のお取り決めとなります)。
Q. 親族が誰も費用を出せない場合はどうすればよいですか?
親族の協力が得られない場合は、自治体の返還金・補助金制度の確認と、最小費用ルート(合祀墓・送骨)の組み合わせを優先してください。それでも用意が難しい場合は、社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度についてケースワーカーに相談する方法もあります。
Q. 墓じまいをせずに放置するとどうなりますか?
管理料の滞納が一定期間続くと、墓地管理者が所定の手続きを経て使用権を取り消し、遺骨を合葬墓へ移すことがあります。これを避けるためにも、費用の工面が難しい段階で早めに福祉事務所や墓じまい業者へ相談することをおすすめします。
Q. 離檀料が高額で払えないと言われた場合はどうすればよいですか?
離檀料に法的な相場や義務はなく、あくまで寺院への感謝の気持ちとして渡すものとされています。生活状況を丁寧に説明したうえで、減額や分割払いを相談できるケースもあります。話し合いが難しい場合は、第三者として墓じまい業者に間に入ってもらう方法もあります。
Q. 遠方に住んでいても福祉事務所への相談はできますか?
可能です。生活保護の担当ケースワーカーは現在お住まいの自治体の福祉事務所ですが、お墓がある自治体の霊園管理担当課への確認は電話や郵送でも対応してもらえることが一般的です。現地に行けない場合は、その旨を最初に伝えたうえで相談してください。
Q. お墓を残していると生活保護の審査に不利になりますか?
お墓(墓地の使用権・墓石)は祭祀財産として扱われ、一般的な資産のように処分を求められるものではありません。生活保護の資産活用の原則が及ぶかどうかは個別の判断となるため、不安がある場合は担当ケースワーカーに直接確認してください。
Q. 墓じまいの費用を分割払いにすることはできますか?
業者によって対応は異なりますが、着手金と工事完了後の残額払いに分けている業者もあります。まとまった金額を先に用意できない場合は、契約前に支払い方法・タイミングを必ず確認しましょう。
まとめ
生活保護の葬祭扶助は墓じまいの費用には使えませんが、生活保護を受給していても墓じまい自体は可能です。まずは担当ケースワーカー・福祉事務所に管理負担や承継者不在の事情を相談し、お墓がある自治体の返還金・補助金制度の有無を確認しましょう。そのうえで改葬先を合祀墓や送骨などの最小費用ルートに絞り、親族との分担も早めに話し合うことで、自己負担を大きく抑えられます。
今回紹介した手順を整理すると、①福祉事務所・ケースワーカーへの相談、②自治体の返還金・補助金制度の確認、③改葬先の最小費用ルート選択、④相見積もりによる撤去費用の圧縮、⑤親族との分担という5つの工夫を組み合わせることが、生活保護受給中に墓じまいの費用を工面する現実的な道筋です。ひとりで悩まず、まずは福祉事務所や墓じまい業者への無料相談から始めてみてください。費用や制度は自治体・墓地の条件によって変わるため、この記事のチェックリストと比較表を手元に置きながら、ご自身の状況に当てはめて確認していただくことをおすすめします。
安心墓じまいでは、墓じまい一式198,000円(税込)〜・追加費用なしの定額プランで、着手金と工事完了後の残額払いに分けてお支払いいただけます。費用の工面に不安がある場合も、まずは無料相談でお気軽にご相談ください。
参考文献
墓じまいの費用、いくらかかる?
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この記事の監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士|東京司法書士会 第7135号・東京都行政書士会 第11924号
東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続手続きや改葬・墓じまいに関わる法律手続き、名義変更などを担当する。安心墓じまいの提携司法書士・行政書士。当サイトでは、改葬許可申請などの行政手続きと、相続・名義に関する法務部分を監修しています(墓じまいの施工内容・費用は監修対象外)。 監修者プロフィール・監修範囲 →
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■経歴
- 1966年鹿児島県生まれ
- 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
- 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
- 2013年司法書士試験合格
- 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
- 2017年司法書士法人コスモ退職
- 2018年事務所開設
- 2021年司法書士法人設立
■得意領域
- 相続登記・相続手続き
- 改葬・墓じまいの手続き
- 相続放棄
- 簡易裁判所の訴訟代理

