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墓じまい費用は相続財産から払える?負担者と遺産分割の注意点

最終更新日:2026年10月11日|監修(法務):司法書士・行政書士 久留慎一郎|作成:安心墓じまい事務局(相談窓口責任者 田所)

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士|東京司法書士会 第7135号・東京都行政書士会 第11924号

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続手続きや改葬・墓じまいに関わる法律手続き、名義変更などを担当する。安心墓じまいの提携司法書士・行政書士。当サイトでは、改葬許可申請などの行政手続きと、相続・名義に関する法務部分を監修しています(墓じまいの施工内容・費用は監修対象外)。 監修者プロフィール・監修範囲 →

監修者プロフィールの詳細

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 改葬・墓じまいの手続き
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理

墓じまいの費用は誰が払うのか、相続財産から出してもよいのかで迷う方は少なくありません。結論から言うと、お墓は「祭祀財産」として相続財産とは別扱い(民法897条)のため遺産分割の対象にはなりませんが、相続人全員が合意すれば遺産(相続財産)から墓じまい費用を支出すること自体は可能です。ただし相続税の計算上は、墓じまい費用は債務控除・葬式費用控除のどちらの対象にもなりません(国税庁タックスアンサーNo.4126・No.4129で明記)。この記事では、相続財産から払えるかどうかの法的な整理と、相続人間で分担する場合の合意書の作り方、相続放棄との関係までを、印刷して使える表・チェックリスト付きで解説します。

目次

お墓は「祭祀財産」として相続財産と別扱い(民法897条)

民法897条は、系譜・祭具・墳墓(お墓)などの「祭祀財産」について、通常の相続とは別のルールで承継されると定めています。祭祀財産は被相続人が指定した人、または慣習に従って「祭祀を主宰すべき者(祭祀承継者)」が単独で承継し、相続人全員で分け合う遺産分割の対象にはなりません。つまり、お墓そのものは法律上「相続財産」ではなく、墓じまいをするかどうかの判断や費用の性質も、現金・不動産などの通常の遺産とは切り離して考える必要があります。

相続財産と祭祀財産の違い(比較表)

項目相続財産(現金・不動産など)祭祀財産(お墓・仏壇・位牌)
承継のルール民法上の相続分に従い分割(遺産分割協議)民法897条により祭祀承継者が単独承継
相続放棄の影響放棄すれば一切受け取れない放棄しても祭祀承継者になれる(別制度)
相続税の扱い課税対象(基礎控除超過分)非課税財産(墓地・墓石そのものに相続税はかからない)
墓じまい費用の扱い遺産分割協議で負担者を決める対象になり得る非課税財産に関する支出のため債務控除・葬式費用控除の対象外

この「別扱い」が、次章で説明する「相続財産から払えるかどうか」と「相続税の控除になるかどうか」という2つの異なる論点を生み出しています。実務でよく混同されるのが、「お墓は相続財産ではない=誰にも関係ない」という理解です。実際には、祭祀財産であるお墓そのものは遺産分割の対象外でも、墓じまいという「行為」にかかる費用の負担や、その費用を遺産のどこから出すかは、相続人同士の話し合い次第で決まる領域です。法律が明確に決めていない部分だからこそ、家族間の認識をそろえておくことが重要になります。

祭祀承継者は誰が決めるのか

祭祀承継者は、(1)被相続人の指定、(2)指定がなければ地域や家の慣習、(3)慣習が明らかでなければ家庭裁判所の審判、という順番で決まります。長男・長女が自動的になるという法律上の決まりはなく、実際には「お墓の近くに住んでいる」「生前に本人から頼まれていた」といった実情で決まるケースが大半です。祭祀承継者が必ずしも費用を全額負担しなければならないわけではない、という点は次章で詳しく説明します。

墓じまい費用は相続財産(遺産)から払えるか

結論として、相続人全員の合意があれば、遺産分割協議の中で墓じまい費用を遺産から支出すると決めること自体は可能です。民法897条は祭祀財産の承継者を定めているだけで、墓じまいにかかる費用を誰がどう負担するかまでは規定していません。実務上は、(1)祭祀承継者が自己負担する、(2)相続人で分担する、(3)遺産の一部を墓じまい費用に充てることで相続人全員が合意する、の3パターンが主に見られます。

相続税の「債務控除」「葬式費用控除」の対象外(国税庁タックスアンサー)

一方で、相続税の計算上は注意が必要です。国税庁タックスアンサーNo.4126「相続財産から控除できる債務」では、被相続人が生前に購入した墓地・墓石の未払代金など、非課税財産に関する債務は遺産総額から差し引けないと明記されています。またNo.4129「相続財産から控除できる葬式費用」でも、墓石や墓地の買入れ・借入れにかかった費用は葬式費用に含まれず、控除対象外と明記されています。つまり、墓じまい費用(墓石撤去・閉眼供養・離檀料・改葬先の費用など)は、相続税の計算上は遺産総額からマイナスできません。「遺産から払うこと」と「相続税が安くなること」は別の話だと理解しておく必要があります。

費用負担パターン別の比較

負担パターンメリット注意点
①祭祀承継者が全額自己負担手続きがシンプル。相続人間の調整が不要承継者の負担が重くなりやすい(総額19.8万〜150万円程度)
②相続人間で費用を分担負担を複数人で分散できる分担割合・期日でトラブルになりやすい。合意書が必須
③遺産の一部を墓じまい費用に充当個々の持ち出しが減る相続人全員の同意が必要。相続税の債務控除にはならない点を共有しておく

具体例で見る「遺産から墓じまい費用を出す」ケース

たとえば、被相続人の預貯金が500万円、相続人が子2人というケースで考えてみます。墓じまい費用が総額20万円かかる場合、相続人2人が合意すれば「預貯金500万円のうち20万円を墓じまい費用に充て、残り480万円を2人で分割する」という遺産分割協議を結ぶことができます。この合意自体は有効ですが、相続税の申告時には、預貯金500万円全額が課税対象の遺産として計算され、墓じまいに充てた20万円分を控除することはできません。「遺産から払った」という事実と「相続税の計算」は切り離して考える必要がある、という点が実務上もっとも誤解されやすいポイントです。

離檀料・改葬先費用の扱いも同様

寺院墓地の場合に発生することがある離檀料や、改葬先(永代供養墓・樹木葬・納骨堂など)の費用も、墓じまい費用と同じく祭祀財産に関連する支出として扱われます。したがって、これらをまとめて遺産から支出すること自体は相続人全員の合意があれば可能ですが、相続税の控除対象にはならない点は変わりません。総額を見積もる際は、墓石撤去費用だけでなく離檀料・改葬先費用まで含めた金額で話し合うことをおすすめします。

相続人間で分担する場合の合意書の作り方

費用を分担する、または遺産から支出すると決めた場合は、口約束で終わらせず簡単な合意書(覚書)を作成しておくことをおすすめします。後から「言った・言わない」でもめるケースは、金額が小さい墓じまいの場面でも実際に起きています。

合意書に書くべき7項目(チェックリスト)

印刷してそのまま使える「墓じまい費用の合意書」チェックリスト
  • □ 墓じまいの対象(墓地所在地・使用者名義)
  • □ 総費用の見積金額(確定額 or 概算の場合はその旨を明記)
  • □ 誰が、いくら負担するか(金額または割合)
  • □ 支払時期(着手金のタイミング・残金の支払期日)
  • □ 支払方法(振込先・立替者がいる場合の精算方法)
  • □ 遺産から支出する場合は、対象となる遺産の範囲と相続人全員の署名・押印
  • □ 作成日・全員の氏名・連絡先

合意書は実印・公正証書までは必須ではありませんが、相続人全員の署名と日付があれば実務上は十分に機能します。金額が大きい、関係者が多いなど複雑なケースでは、弁護士・行政書士など専門家に文面のチェックを依頼すると安心です。

合意書と遺産分割協議書を分けるべきケース

遺産分割協議書に墓じまい費用の条項を直接盛り込む方法と、別紙の合意書(覚書)として分ける方法があります。不動産や預貯金の名義変更など、すでに正式な遺産分割協議書を作成済みの場合は、後から墓じまい費用の覚書を追加しても構いません。一方、これから遺産分割協議書を作成する場合は、「預貯金〇〇円のうち墓じまい費用として〇〇円を充当する」という一文を協議書本体に盛り込んでおくと、書類が1通で済み管理がシンプルになります。

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相続放棄との関係

「相続放棄をすれば、お墓の管理や墓じまい費用の負担から完全に逃れられる」と考える方もいますが、これは正確ではありません。相続放棄は現金・不動産などの「相続財産」を受け取らない手続きであり、祭祀財産(お墓)の承継とは別の制度だからです。極端な場合、相続放棄をした人が慣習上の祭祀承継者とみなされ、お墓の管理義務だけが残るケースもあり得ます。相続放棄を検討している方は、墓じまい費用との関係を整理したうえで判断することをおすすめします。詳しい制度の仕組みは〈相続放棄とお墓の関係〉で解説しています。

ケース別シミュレーション:費用負担の試算

墓じまい一式198,000円〜(税込・追加費用なし)を前提に、代表的な3つのケースで負担額を試算しました。実際の金額は墓地面積・立地・離檀料の有無で変動するため、あくまで目安としてご覧ください。

ケース総額(目安)負担の内訳
A. 子1人が祭祀承継者として全額負担198,000円〜承継者1人が全額負担。合意書は不要だが、他の相続人への事前報告があると後々のトラブルを防げる
B. 兄弟3人で均等に分担198,000円〜1人あたり66,000円〜が目安。離檀料や改葬先費用が上乗せされる場合は総額で再計算し、同じ比率で再分担
C. 相続財産(預貯金)から一部を充当し、残りを分担198,000円〜+改葬先費用相続人全員の合意書を作成し、遺産分割協議書にも墓じまい費用の充当について一文を残しておくと安心

いずれのケースでも、改葬先(新しい供養先)の費用や離檀料の有無によって総額が変わるため、分担方法を決める前にまず正確な見積もりを取ることが欠かせません。

費用が確定しないと分担が決まらない

ここまで見てきたように、合意書を作るにも、遺産から支出するかどうかを相続人全員で話し合うにも、前提として「総額がいくらになるか」が確定している必要があります。概算のまま話し合いを進めると、後から金額が変わって合意をやり直すことになりがちです。安心墓じまいでは、墓じまい一式198,000円〜(税込)の定額制で、追加費用なし・着手金+完成後の残額払いというシンプルな料金体系を採用しています。まずは無料見積もりで総額を確定させてから、ご家族で分担方法を話し合うことをおすすめします。

改葬許可申請の手続きについて

墓じまいには、現在のお墓がある市区町村への改葬許可申請が必要です。必要書類は自治体ごとに多少異なりますが、一般的には改葬許可申請書・現在の墓地管理者による埋葬証明・改葬先の受入証明の3点がベースになります。相続人間で費用分担の話し合いを進めるのと並行して、こうした書類集めも進めておくと手続き全体がスムーズです。申請書類の収集や記入が難しい場合は、安心墓じまいから提携の行政書士をご紹介することが可能です(ご契約・報酬のお支払いは行政書士と直接となります)。費用負担の話し合いと並行して、手続き面の不安がある方はご相談ください。

「費用は誰が払う?」との違い

当サイトには〈墓じまいの費用は誰が払う?〉という記事もあり、内容が近く見えるかもしれません。住み分けは次の通りです。

  • 「誰が払う?」記事:祭祀承継者・兄弟間の慣習的な負担の考え方が中心(法的な決まりがないことを前提にした一般論)
  • この記事:「相続財産・遺産分割」という法的な軸から、相続税の扱い・合意書の作り方・相続放棄との関係を整理(より法律寄りの切り口)

兄弟間の分担相場や話し合いのコツを先に知りたい方は〈墓じまいの費用は誰が払う?〉もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 墓じまい費用を遺産分割協議書に書いてもよいですか?

可能です。「遺産のうち〇〇円を墓じまい費用に充当する」といった一文を遺産分割協議書に加えることで、後日の認識違いを防げます。文面に不安がある場合は専門家に相談しましょう。

Q. 墓じまい費用は相続税の申告で控除できますか?

できません。国税庁タックスアンサーNo.4126・No.4129の通り、墓地・墓石に関する費用は非課税財産に関する支出として、債務控除・葬式費用控除のいずれの対象にもなりません。

Q. 相続人の1人が費用を払いたくないと言っています。どうすればよいですか?

法律上、墓じまい費用の負担を強制する明確な規定はありません。祭祀承継者が自己負担する、総額を抑えるプランを選ぶ、合意できる範囲で一部だけ分担してもらうなど、現実的な落としどころを探る必要があります。まずは正確な見積もりを取り、話し合いの土台を作ることをおすすめします。

Q. 墓じまい費用を確定申告で経費にできますか?

個人の確定申告で、墓じまい費用を医療費控除のような形で差し引ける制度はありません。前述の通り相続税の債務控除・葬式費用控除の対象にもならないため、税負担を軽くする目的での申告はできない点にご注意ください。

Q. 遺産分割協議がまとまる前に墓じまいを進めてもよいですか?

進めること自体は可能ですが、後から「誰がいくら負担するか」で揉めるリスクが残ります。できれば費用の総額(見積もり)だけでも先に確定させ、簡単な合意書を交わしてから着手すると、遺産分割協議全体もスムーズに進みやすくなります。

まとめ

お墓は祭祀財産として相続財産とは別扱い(民法897条)ですが、相続人全員の合意があれば遺産から墓じまい費用を支出すること自体は可能です。ただし相続税の計算上は、墓じまい費用は債務控除・葬式費用控除のどちらの対象にもなりません(国税庁No.4126・No.4129)。相続人間で分担する場合は、合意書に金額・負担者・支払期日を明記し、相続放棄を検討している場合は祭祀財産との違いを理解しておきましょう。何より、話し合いの前提として総額を確定させることが大切です。安心墓じまいは墓じまい一式198,000円〜(税込)の定額制・追加費用なしで、着手金+完成後の残額払いに対応しています。まずは無料見積もりでご相談ください。

参考文献

墓じまいの費用、いくらかかる?

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この記事の監修者

司法書士・行政書士 久留慎一郎
監修者

久留 慎一郎(ひさどめ しんいちろう)/司法書士・行政書士|東京司法書士会 第7135号・東京都行政書士会 第11924号

東京大学法学部を卒業後、日本航空株式会社に26年間勤務(うち法務部に4年間所属)。在職中に司法書士試験に合格し、2018年に独立開業、2021年に司法書士法人を設立。相続手続きや改葬・墓じまいに関わる法律手続き、名義変更などを担当する。安心墓じまいの提携司法書士・行政書士。当サイトでは、改葬許可申請などの行政手続きと、相続・名義に関する法務部分を監修しています(墓じまいの施工内容・費用は監修対象外)。 監修者プロフィール・監修範囲 →

監修者プロフィールの詳細

■経歴

  • 1966年鹿児島県生まれ
  • 1985年鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 1989年東京大学法学部卒業/同年、日本航空株式会社入社(2002〜2006年は法務部所属)
  • 2013年司法書士試験合格
  • 2015年簡易裁判所訴訟代理等に関する法務大臣認定/同年、日本航空株式会社退職、司法書士法人コスモ入所
  • 2017年司法書士法人コスモ退職
  • 2018年事務所開設
  • 2021年司法書士法人設立

■得意領域

  • 相続登記・相続手続き
  • 改葬・墓じまいの手続き
  • 相続放棄
  • 簡易裁判所の訴訟代理
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この記事を書いた人

資格:終活カウンセラー。安心墓じまい 相談窓口責任者。幼少期の祖父母との温かい思い出を原点に、「誰もが迷わず、安心して終活を終えられる社会」を目指して、墓じまいから実家じまいまで終活全般の相談窓口を務める。ライフワークとしてYouTubeで高齢者の方々への人生インタビューを続け、シニア世代の本音に寄り添うカウンセリングを最も得意とする。記事は自治体・厚生労働省などの公的一次情報にもとづき、編集部とともに執筆・確認。

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